DOWN TO 5 / BUTEO XC

DOWN TO 5

パラグライダーの性能と安全性の向上には多くの側面と変動要素が存在します。その一つがラインセットにおいて誤差を小さくしていくことです。この項目では、完璧なラインセットを得るためにどれだけの努力がなされ、またなぜそれが必要なのか細かく述べていきたいと思います。

 

IT’S ALL ABOUT PERFORMANCE AND SAFETY

ラインの話なのに、どうして性能と安全性について語り始められたか分からない方も多いことでしょう。答えは簡単です。ラインはそのどちらにとっても最も重要な変動要素だからです。ここでのキーワードは精確さです。３Dモデルから計算されたライン長と実際のライン長が合わなければ、パラグライダーは設計通りには飛びません。特にBUTEO-XCのような高性能機において重要です。なぜかという説明もとても簡単なものです。グライダーのリブの数が増えればリブ間のキャノピーのふくらみが少なくなることで、基本的に翼が構造的により堅くなり、同時にラインの誤差やバラツキの影響を受けやすくなるからです。安全性の面から言って、試験され認定されたグライダーが設計通りの内容を保持するためには、精確なラインセットが必要なのです。

ラインのこういった問題を突き詰めていくことは、あらゆるデザイナーにとってグライダーの全ての飛行特性を進化させていくキーなのです。

 

LOOP COMPENSATION

まだループ補償について聞いたことはなかったですか？それはラッキーです。と、言うのもこの話は込み入ったものだからです。ブテオXCを例にとると、ラインのタイプごとに太さが違いますが、もし違うタイプのライン同士をつなげようとすると、デザインソフトウエアから計算された３Dモデルの長さになるようにするには、接続部でどれだけ余計な長さが必要になるかをまず初めに計算しなければなりません。これがライン補償です。多くの異なるラインタイプをラインツリーと呼ばれる木の枝のように張り巡らせてつなげていかなければならないのです。下記のライン表に見られるように、ひとつひとつのラインの接続部でそれぞれのループ補償が必要になります。

各接続点での正しい補償なくして正しい翼は得られません。もしラインツリーの中で１箇所でもミスが起きれば、このエラーはライザーまで伝わっていきます。

 

 

 

ASSEMBLING

ライン組立は、完璧さを求めるうえで次に必要な部分です。ライン同士をどのようなやり方でつなげるかは、ループ補償計算の前に決定されていなければなりません。これで追加する長さを正確に計算できるからです。ブテオXCの場合、Aラインからブレークラインへ、そして翼の中央から翼端へと始めていきます。

図で黄色の円で囲まれた箇所のラインは、接続の上側になります。赤色の円で囲まれている箇所のラインは階級分けされるツリーライン組立を示しています。

 

黄色：a2ラインをa1ラインの上に置く組立。
赤色：d8ラインを一番上として、d7ライン、c8ライン、c7ラインと置く組立。

 

 

 

CUTTING, SEWING, CHECKING

ここまで、デザインの見地からラインの話をしてきました。ご存知の通り、全てのICAROグライダーはスリランカのエアロダイナミック社で製造されています。では生産現場では、どうなっているのでしょうか？正しい翼を得るための努力はここでも変わりません。全てのラインは1本、1本、それぞれ設定された荷重の下で計測され、印を打たれ、こうして裁断されたラインの両端は設計通りの長さにループ縫製されます。そして、こうして製作されたラインは全て、もう一度チェックを受けます。ここでの許容誤差は１ｍｍまでです！想像してみてください。もし1本のラインが２mm長かったとして、接続するラインが3段あったとすると、全体で6mm長くなってしまいます。もしループ補償の計算も間違っていて接続点ごとに2mm長かったとすると、全体のエラーは12ｍｍに達します。計算された3Dトリムから12mmの違いは、グライダーの挙動を悪化させてしまうのに十分な影響を及ぼすのです。

 

CONCLUSION

ここで結論です。以上に述べた全ての要素をとことん突き詰めていく努力によって、翼からライザーまでのラインツリー全体での誤差を、10ｍｍから5ｍｍにまで抑えていくことができたのです。この成功によってブテオXCを今までよりはるかに高い精度で開発し、卓越した性能と安全性を生み出すことができたのです。