ICAROデザイナー ミハエル・ネスラー より。

DHVホームページ 2012・7・6(訳) from Michael Nesler

プラスティックロッド、イエス or ノー?

(典型的な「次世代」構造のEN-C プロトタイプ機:ピュア2ライナー、ロッド、リジッドフォイル、3D設計、そしてAライン接続点は前縁からずっと後方へ)

 

 

 

 

 

 

ミハエル・ネスラー(ICARO-Paraglider デザイナー) より
今やほとんど全てのパラグライダーが前縁のサポートにプラスティックロッドを使用しています。メーカーは、これを使うことで安定性や性能の向上、重量の軽減を約束していますが、プラスティックロッドの使用は性能限界の押し上げ、生産コストの削減にもつながり得るのです。

プラスティックロッドにもいろいろあります!
プラスティックロッドにはいくつかの異なる素材があります。ナイロン(PA6.6)、塩化ビニール、ABS樹脂、ファイバーグラス、カーボン、そしてチタンです。最も安価なのは塩化ビニールやナイロン製のもので、高価なマイラーやダクロンの生地の代わりに使えば生産コストが下がりメーカーにとってありがたいことです。さらに、うれしい副作用として機体重量の低減もあります。ロッドのかたさはその太さと素材によります。注意深く選択すれば、古典的なマイラー/ダクロンの構造による「古い」サポート方式を、機体の飛行特性や安全性に影響を与えることなく、プラスティックロッドに変更することが出来ます。こうして機体を少し軽く、安く製造して、新型の革新的な製品として紹介することが出来るわけです。かためのロッドを使うと機体の飛び方や乱気流への反応の仕方が変わります。セルのセールクロスは太鼓の皮のように強く張られ、翼型の前縁付近は前縁に行くほどかたくなってきます。このおかげで、テイクオフで機体を広げたときにセルはしっかりと口を開き、機体の立ち上げが楽になり、乱気流で潰れたときも回復が早くなり、空気力学的により洗練された形状が保たれることで性能も向上していきます。

我々はアクロバット機のニキータ3の開発中に、プラスティックロッドの使用によって、マイラー/ダクロン補強に比べてクラバットの可能性が大きく減じることに気がつきました。補強方法だけを変えた2機の同じプロトタイプを作り、テストしたところ、プラスティックロッドの方がより安全であると言うことがはっきりと示されました。この結果に対して考えられる説明は、潰れからの回復は、主にセル間でのクロスポートを通っての内圧の移動ではなく、折り返し点のセール上面で発生する揚力によって行なわれる、というものです。クロスポートのない機体でも、ほんの少し回復が遅いだけです。折り返し点では翼型のキャンバーは増し、翼上面側の気流の静圧を減じることになります。これが潰れたセルを吸い出す作用をおよぼし、そのまま翼が完全に開ききるまで連鎖反応が続くわけです。プラスティックロッドで前縁補強した機体ではこの過程がより速く進むようです。内側で折れ曲がってしまい、空気力学的に有効な翼断面のキャンバーを作り出さないことのあるマイラーに比べて、ロッドは空気力学的な構造の保持に有効なのです。

結論として、マイラーやダクロンによる補強の代わりにプラスティックロッドを使用することによって、、機体重量・性能・乱気流からの回復の面において良好な影響が得られると言うことができます。

プラスティックロッドの悪い点
過去20年間にわたるパラグライダー開発の中で前縁補強のサイズはだいたい決まってきました。通常サイズよりもずっと大きな補強を使った機体はちょっと見つけられません。最適な補強のサイズは長年の試行錯誤の産物であり、性能・安全性・重量のバランスの折り合うところです。さて、パラグライダーではAラインの接続ポイントの位置は重要な設計要素です。Aラインが後ろにあればあるほど機体は乱気流に対して許容度が増し、突然の荷重変化もより吸収してくれます。しかしAライン接続ポイントをあまり後ろにしすぎると、ある段階から飛行中の翼型の維持に対して前縁のサポートが不足してしまいます。
プラスティックロッドの使用によって従来よりもさらにAライン接続ポイントを後方へ配置することが可能になりました。これは性能面では有利に働きます。後列のラインとの距離が縮まり、わずか3列、さらには2列のライン配置で機体を作ることが出来るようになったのです。さらに、より高性能の翼型の使用が可能になり、その安定性の問題も(少なくとも通常の飛行条件では)注意深くライン接続点やロッドのかたさ、内圧を設定することで対応できます。下面セールの後方に向かって大きなキャンバーを持たせた翼型は、こういった新しい設計の典型です。これらは迎え角の変化に対してとても許容度があり、性能もよく、パイロットにとって(見かけだけでも!)安定性の向上が感じられます。しかし、この一見した安定性の向上には限界があり、いったん機体がフロントあるいは非対称のストールに入ると、従来の機体に比べて変化が大きく反応もより激しく予測不能になります。他の問題点としては、プラスティックロッドを装備した機体はテストし難いということです。潰れをつくりだすには大きな力が必要であり、作業中に乱気流に会うとどちらのせいか見分けがつきにくくなります。これはメーカーが用意してくれる折込ラインなどの仕掛けを使ってもなかなか解決できないほどです。

★前縁から遠く配置されたAライン接続点とロッド

★塩化ビニール製のロッド

★古典的なAライン接続点の位置

★新しいAライン接続点の位置

プスティックロッドによって限界まで押し上げられた機体設計
下面セールにおいてAラインの接続ポイントは機体がテイクオフできるように位置しなければなりません。あまり後ろすぎると機体は強風でしか立ち上がってこなくなります。一般的にAラインの接続ポイントは機体が適切にテイクオフできる範囲で決められます。かたいロッドを使用して下面セールに適切な範囲で長く組み込めば、Aラインの接続ポイントを前縁からかなり離れたところに設定することが出来、もし上面セールにも同じだけ長くロッドを組み込めば、前縁のトータルなかたさは効果的に倍増しセールクロスは広い範囲にわたって太鼓の皮のようにかたく張られます。この設計を限界まで押し進めていくと、翼型の前4分の1、さらには3分の1が一昔前のハンググライダーに相当するほどのかたさを持つことになります。これはもうハンググライダーであり、絶対に潰れません!
しかし上面と下面のセールに長いプラスティックロッドを組み込んでいると、万が一、機体が潰れた場合には問題があります。潰れによって翼型がロッドの端で折れ曲がり、キャンバーではなく鋭角な折れ線になる可能性があるのです。こうして回復が遅れるか阻止され、潰れて折り返った部分はロッドによってすぐにはしぼまず、機体の前にぶら下がる巨大な空気抵抗板になってしまい、激しいピッチング・ローリング・ヨーイングを発生させます。Aラインを後方へ配置すればするほど、潰れたときの機体の挙動は制御が難しくなってくるのです。

ロッドの技術はさらに発展していくかも知れません。BラインやCラインの接続ポイントにもロッドの補強を入れて荷重の配分をさらに良くすることで、トータルではより少ないライン数にしていくことが出来ます。それには2つの可能性があります。ひとつは、上面セールにつながるリブの上端ヘムに直線ロッドを縫いこむものです。もうひとつは、リブにアーチ状に取り付けて下面セールに荷重をかけるというもので、アーチの真ん中の接続ポイントとあわせて3箇所で下面セールに荷重配分されることとなります。

しかし、ここで、楽しく満足して飛ぶうえで本当に性能がもっともっと必要なのか、という疑問が生じてきます。私の意見としては、性能は競技会やオンラインコンテストといった直接比較が存在する場合にのみ重要であり、ホームエリアで楽しみのためにクロスカントリー飛行を行って自分達の飛行技術で無理なくアウトランディングに挑戦しようというパイロットにはこのわずかな性能差は必要ない、と思います。特に、性能差はスピードシステムを使用しているときにのみはっきり現れ、レクレーショナルパイロットは緊急事態(残念ながら地面や山肌の近くで発生することが多いのですが)でない限りはスピードシステムを使いたがらない、ということもあります。

この反論として、多くのメーカーや熱心なプラスティックロッド機パイロットは、自分達の新型機の性能やより素晴らしい安定性を訴えるでしょう。この議論は簡単には終わらせることが出来ないものです。経験を積んでいて普段からしっかり飛んでいるパイロットがハイアスペクト比の機体で飛んでいて潰れに会うということはまずなく、潰れたとしてもたいていは小さなものでしかありません。これはパイロット自身の能力・経験によるものであり、また、このような機体では乱気流への対処で使うブレーク操作の効きがとても良い、ということもあります。機体のアスペクト比が高くなればなるほど、ブレークの効きは敏感になります。これは少しブレークを引くと同じわずかな反応時間で効いてくるという言い方も出来ます。
忘れてはなりませんが、集中力がなかったりやる気のない飛び方では、これらの機体は潰れます。高性能機で大きな潰れ(EN/LTF試験で75%)を起こすとたいていはとんでもないクラッシュになってしまう、と言うことはよく知られていることです。過去の数字は比較的甘いものでしかありません。パイロットは最初から潰れが起こらないように頑張り、たいていは上手くいくからです。

 

結論

プラスティックロッドには長所もあり短所もあります。正しく使えばパイロットにとって明らかな利点があります。しかし一方で、もしも機体の性能向上のためだけに使われていくと、今までにない危険性が潜んできます:
・ 潰れからの回復時の予測できない挙動。「非常に潰れ難いですから」と言い張ったとしても、「それでももし潰れたら?」の結果がコントロール不能のクラッシュだとしたら、全く意味がありません。
・ 激しい性能および安定性の低下の可能性。万が一ロッドが折れ曲がったり変形したままだった場合。
・ 機体が古くなってきたときにディープストールの危険性が増大。前縁の透過率が無くなっても気づかない。
・ 収納が難しい。飛行機での移動にかさばる。
・ パラグライダーの「簡単さ」が失われる。

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