STEP DOWN TO STEP UP

ステップアップするためのステップダウン

EN-Bグライダーでクロスカントリー
ローエンドのグライダーの性能レベルが上がってきて、上級機とのギャップが無くなり、安定性とともに信じられないような性能を発揮するようになってきた。これでは、急いで上級のグライダーにステップアップしていくことに、アドバンテージはあるのだろうか?

5年間、EN-Dグライダーで、そしてアクログライダーではそれ以上に渡って飛んできたことで、翼は私の体の一部となり、無意識に操縦反応できるようになる一方、B認定グライダーのリラックスしたフライトも楽しめている。そして今、そのグライダーが素晴らしい性能を持ったことで、これこそ実り多きクロスカントリーフライトに最適の機体となった。
とても弱い北東風の予報に対して、我々4名のクロスカントリーパイロットの小さなチームは、南方向へのオープンディスタンスのルートを計画した。私は自分のXCグライダーを人に貸してしまっていたので、他のパイロット達の高アスペクト比(6.9~7)のEN-D機、ゼノ、クライマー、ポイズンX-Alpsに付いていくために、自分には少し小さめのミッドEN-Bグライダー、イカロ社のグラヴィスを選んだ。太めのアスペクト比5.2に、ほかのメンバーの視線は冷たかった。
私は、一番でスタートを切ろうと最初にテイクオフしたが、1.2m/sの渋い上がりではテイクオフから後ろに流されて行ってやっと1400mである。サーマルのトリガーポイントをいくつか狙ったが失敗で、次に拾えたサーマルは探るのが難しく上がらずに流されていくだけだったが、対地68mから上げなおすことが出来ただけでなく、グラビスの予想以上の素晴らしい上昇能力のおかげで、低いところを這いつくばっていたのが、一気に2200mまで上がった!

始めの70kmは(予想した通り)上がったり下がったりで、1500mから2000mの間を皆バラバラのコース取りでほとんど雲のない青空の下を進んで行った。私は、上げきるたびにそのトップ付近で、ヘリコのサーマリングやベーシックなアクロをやって遊び、EN-B機のパッシブセーフティーを存分に楽しんだが、これは高アスペクト比の翼ではできなかったことだ。
午後になるとサーマルの目印となる積雲がきれいに点在していき、我々は上空で合流して小さなガーグルを形成してフライトを楽しんでいった。風は弱いままで向きもまちまちだったが、(最高9.7m/sと)サーマルが強くなり雲底も上がったので、進みが早くなってきた。終盤に至って、9kmに渡る広大な樹林帯の上をドキドキしながら越えているとき、とうとう6km/hの向かい風に出くわした。6時間半におよぶフライトも終わりに近づき、太陽も低くなり、我々はファイナルグライドに入っていった。すでに近くのパブを検索で調べてあり、そのそばにゴールを決め、次々と同じ場所に降りた。166km飛んで素晴らしい夕日の中、皆で一緒に降りてビールが待っていてくれるという最高のフィーリングだった。

ハイエンドのグライダー達に付いていけたことは、印象深いことだったが、これは驚くことではなかった。EN-Bながらグラヴィスのトリム速度はEN-D機にとても近いもので、滑空比はわずかに低い(例えば10kmのファイナルグライドではゴール到達高度が200mくらい低かった)ものの、サーマルのセンタリングは極めて楽で、上昇率も大変近いもので悪くはない。最もはっきりした性能上の差はアクセルを踏み込んだ時の速度と滑空比で、EN-D機に比べるとトップスピードが遅く、アクセルを半分以上踏み込んだ時の滑空比の低下が挙げられる。このフライトでも私は、半分以上バーを踏み込むことはほとんど無かった。しかし、それでも皆に付いていくペースを保つには十分だった。運動性やフィードバックの敏感さは、もちろんハイエンド機に比べると鈍いものだが、大幅に増大した安定性のおかげでとてもリラックスした楽しいフライトであり、そうして同じ距離を飛んだのだった。
コンペティションや強風の条件では、ハイエンド機のわずかに高い速度および滑空比の性能はアドバンテージとなるが、この日のようなクロスカントリー飛行で距離を飛んでいくには、EN-B機でも全く変わりはなかった。

次の機体に乗れる技術を身につけたらすぐに乗り換えてステップアップしていくのが常識のようになっているが、遠くまで距離を飛んでいくには必要のないことだ。高い性能は、技術をステップアップさせ、そのグライダーを完全にマスターし、アクセルを常に全域にわたって使ってこそ、得られるものだ。そのグライダーを乗りこなし、しっかりした判断ができるようになれば、サーマリングやサーマルのトリガーポイント、最適な滑空速度、グライド中のルート選定など、もっと多くのことを身につけることが出来る。ホットな機体のわずかに高い性能は、そのグライダーが完璧に乗りこなされ、最高の効率で飛んでこそ、得られるものである。
EN-B機のもう一つの大きなアドバンテージは、SIVやアクロを安全に容易に練習出来ることだ。遅めの動きとそのパッシブセーフティーは、ベーシックなマヌーバーの習得には最適
で、翼の持つダイナミックな動きをより深く理解できる。こうして、グライダーの動きを読み取る能力、そこからさらに空気の動きを読み取る能力が大きく向上すれば、クロスカントリーの技術が大きく向上することになる。
最高のクロスカントリー機は、パイロットがその性能を最高に引き出すことをマスターした機体であるが、さらに大切なのは、楽しく飛べて、より長い時間、より遠い距離へと意欲を駆り立ててくれる機体であることだ。

豪州ハンググライダー連盟 機関誌 スカイセーラー誌 2019年3月/4月号より
(ICARO-Paragliders・GRAVISレビュー)
by シェイン・タイ&モーリー・マケイン

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