DHV Meets Makers / Croos Country誌 170号より

クロスカントリー誌に掲載されたDHVとPMA(パラグライダー・メーカー協会)との会談に関する記事の翻訳です。

 

(補足)

この記事をお読みいただくに当たり、DHV側とメーカー側の言い分を正しく読み取る参考にしてもらえたらと思います。ハンググライダーを含め、昔からメーカー側のDHVへの不満は聴いた事が良くあります。今回のセイフティーテストだけでなく、プロフェッショナル側から言わせると、その体質が時としてbureaucratic(官僚的)過ぎるということです。一方でDHVのような公的で権威のある機関の存在はスカイスポーツに必要で重要な役割も当然ながらあるでしょう。結論的に言えば、お互いの役割と能力を踏まえた上でのコミュニケーションが望ましいという事です。

参考の一例としてHGMA(ハンググライダー製造者協会)のテストについて紹介しておきます。米国のメーカー主導で始まったテストは、メーカーの自主的なテストでありながら、その厳しい基準を自ら課す事と証拠ビデオ等を含むレポートでの公平性において、信頼され今に至っています。一方で当時日本の公的機関として実施されたテストは、あまりに形式的で甘い内容で現実的とは言い難い内容で機能出来ませんでした。

今回の記事には述べられていませんでしたが、この論議には欠けていた観点が一つあるよいうに思えます。それはハード面のみでのパッシーブセイフティーに終始するのではなく、運用面での実用的な正しい機材選択という面です。例えばAクラス機が全て同じ安全性と言う事はないかもしれませんが、実際にはスクールやインストラクターが彼らの生徒に何がベターなのかという事は、セイフティーテストの結果だけから判断出来るのではないという事です。参考にする事は良い事ですが、最終的にはインストラクター自身が機体特性と性能を良く把握して、判断する必要があるという事です。エリアの特性、指導方法、レッスンメソッド、そしてスチューデントのタイプなどによって。簡単言えば、どんな乱暴なコントロールをしてもオッケーな機体は存在しないし、仮に限りなく大丈夫で極端に性能を落とした機体が絶対安全なのかということです。

 

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 DHV Meets The Makers

DHVとメーカーの会談 :セーフティークラスは続行

Croos Country誌 170号(2016年6月)より

DHVは、不満を抱くメーカーとの「秘密会談」を2月に行った後、その独自のパラグライダーセーフティーテストを運用する決意を新たにした。
ドイツにおいて35000人のパイロットを代表しスカイスポーツに多大な影響力を持つDHVが、3社のメーカーの代表たちと、多くのパイロットに読まれているDHVセーフティーテストに対する懸念について話し合うための会談を持ったのである。
このテストは、EN-AとBの機体だけを対象として「実際の条件」でパッシブセーフティーをテストし、DHVのウエブサイト上に英語およびドイツ語で掲載されており、昨年10月にPMA(パラグライダー製造社協会)から猛烈な批判を浴びたものである。
この時PMAは、「これは市場をゆがめる」と断定し、DHVセーフティーテストで悪いテスト結果が示されるとその機体は市場から葬り去られることになると指摘した。しかも全てのEN A/B機がテストされるわけではなく、DHVセーフティーテストの試験制度は透明性を欠いているため、このテストは不公平なものである、とPMAは指摘した。ミュンヘン空港のモーベンピックホテルで2月に開催されたこの最初の会談から12日後、DHVの委員会はメーカーの懸念について討議するための内部会議を開催した。それから約2週間後、DHVはパラグライダーメーカー各社に、セーフティーテストの継続を通告した。「なぜならば、このテストはEN/LTF認証テストよりも優れた情報を与えてくれるからである。」
雑誌やウエブサイトといった典型的な第3者的な試乗記と異なり、DHVセーフティーテストでは性能や一般的な使用特性は評価対象とはせず、つぶれのテストを行って機体ごとにどう違うかを比較することを目的としている。テストする個々の機体の相対的な「安全性」を識別して、1を「最も安全」とする1から5までの5段階の評価を与えている。
数年前にこのテストが始まったときの考え方は単純なものだった:それまでにない性能を発揮するあまりに多くの機体がEN Bクラスにあふれていて、パイロットはどうやってこれらを区別していけばよいか迷っていたからだ。
DHVによればENの評価付けは「目の粗いふるい器」のようなものである。きめ細かく万が一の状態においてその機体に実際に何が起こるかを探っていくことを、DHVは求めている。第1回目のテストでは16機を比較し、結果の記録にはローカルなエンジニアリング会社が開発したデータロガーを使用した。
このロガーは、テストパイロットが、フロントやサイドのコラップス(つぶれ)コラップスオンバー、Bラインストール、翼端折り、スパイラルダイブといった一連のつぶれに入れた時の、損失高度、ピッチ、ローテーション、Gフォース(遠心力)、方向の変化を測定する。2個のデータロガーが使用され、1個は磁石プレートでキャノピーに取り付けられ、もう1個はハーネスに搭載される。
第1回目のテスト結果が公表されたとき、DHVは自分たちの意見が証明されたとみなした。「AおよびBクラスにおいて本当に危険な機体は見受けられなかった。だが、大きなつぶれからの回復で60mもの高度を必要する機体を何機も見るのは恐ろしいものだ。」
「その間にピッチは驚くほど前に突っ込み、ほとんど360度ローテーションし、沈下率は20m/sを超えている。これではとても初心者向きの機体とは言えない。」当然、ドイツのパイロット達はこのテスト結果に注目し、さらにその続きを求めていくようになった。
DHVは、この第1回目のグループテストから11回に分けて70機のEN AおよびEN Bをテストした。「LTF-AおよびLTF-B機に対するDHVセーフティーテスト、パート11」は4月に公表され、オゾン社のアトム3、イカロ社のピカ、ジン社のボレロ5、スイング社のセンシス、BGD社のベースがテストされている。
しかしながら、メーカー各社が気づかされたのは、このテストの人目をひく傾向のために、パイロットの購買行動にDHVセーフティーテストが強い影響力を持つようになったことである。これはある者にとっては良い結果をもたらすが、そうでない者も出てくる。何社かのメーカーによると、もはやDHVセーフティーテストは1つのレポートを出すだけでその機体の運命を決めることができる。
特にメーカー各社が不満を抱き続けてきたのは、テストの不透明性とDHVからメーカー各社へのコミュニケーションの欠如である。彼らに言わせると、DHVは上から見下ろす態度でもって、プロフェッショナルではないテストパイロットと、まったく透明性のないテスト基準のもと、広く信頼されてもいなければ自由に入手することもできない自家製のデータロガーを使って「ENテストを再テストしている」のだ。
昨年の10月に業者団体であるPMAは、このテストによって引き起こされた「受け入れがたい市場のゆがみ」と彼らが見なしているものについて提議した。彼らは強い語調の声明を発表し、このテストは「整合性のない」分類システムであると断じ、DHVに対して「自分勝手な製品テスト機関」だと非難した。
PMAによると、その結果、全ての者にとってより高い安全性がもたらされるどころか、「パイロット、スクール、インストラクターの利用する市場において高いレベルの不安定さ」を生み出している。
彼らによると、DHVは機体をわずか1サイズで、標準的ではないハーネスを用いて、統制のとれていない条件設定でテストしている。「適当に詰め込まれた」わけのわからないテストシステムのために、普遍的に受け入れられるテスト基準としてのENシステムを目指して何十年にもわたって開発されたものを捨て去っているのである。
さらに、DHVセーフティークラスのテストパイロットは、通常の条件であれば「普通、発生するとは思えない」状態に機体を持って行っている。そのデータロガーは「実証されたものでもなければ広く認められているものでもない。」また実施手順の多くは「整合性がなく、実証性もない。」こうして、ENテストと違ってDHVセーフティーテストはその形式や実施要領において新たな機体開発で参考にしていくことが「不可能」であると、メーカー各社は考えた。
PMAでは「テスト結果が悪いと機体への評価が大きく下がり、メーカーは販売中止に追い込まれてしまう。」と断定している。
しかしPMAの声明は多くのパイロットから不同意を受けた。パラグライディング・フォーラムの運用者の1人には「つまらぬお笑い草」と言われ、他のパイロットからも、「DHVによるこの作業は素晴らしく、良い参考情報になっている」と多くのパイロットが感じている、と言われた。

PMAの公式声明は失敗したかに見える。しかし、実際には本誌において多くの内部メールが示すように、DHVはメーカーとの連携を開始した。DHVから会長を含む3名の代表が、3社のメーカー代表と今年2月16日に秘かに会談したのだ。
この会談の内容をあるトップデザイナーが記し、他のPMAメンバーたちへ送られたものによると、DHVはこの会談の内容が漏れることに神経をとがらせている。彼の手記には「DHVはこの会談を公にしても得にはならない。パイロット達はメーカーとの会談でDHVがメーカーの影響を受けてセーフティークラステストの基準を変更する可能性があると思うかもしれないからだ。」と書かれている。
そしてこれは実際に起こったことと符合する。3月16日に何社かのメーカーに送られたメールの中でDHVは、問題点について検討した結果、テストは継続することとしたとしている。
「経験のないパイロットや練習の足りない者にとって、EN A機が高いパイロット技量を求めているかどうかを知る信頼できる情報が必要だ。また彼らはローレベルのEN B機として販売されている機体が要求するパイロット技量についても適切な情報を必要としている。」
DHVはまたパラグライダーメーカーの協力をあおいでデータロガーとソフトウエアを開発して市場に提供し、メーカーのテストパイロットが機体開発でこれを使用していけるよう申し入れている。
さらにメーカーのテストパイロットともっと密接に作業し、セーフティーテストの説明をしていくことを約束した。「DHVは、DHVセーフティーテスト手順に何らかの変更ないし追加を行う場合は、十分に前もってこれをメーカーに通知することを約束する。」とも付け加えている。
またDHVでは、ハーネス用のセーフティーテストを開発することを計画している、とも付け加えた。
さて、全てのメーカーがセーフティークラスへ懸念を表明しているわけではない。中にはこのテストに好意を持つメーカーもあり、自社機の営業宣伝にテスト結果を使うメーカーもある。
しかしながら、このテストを嫌うメーカーにとって、透明性の推進や連携参画は、両刃の剣だ。それは、自分たちが嫌うテストへの関与を深めていくことを意味し、かえってセーフティークラステストに高い信頼性と「より高い価値」を与えていくかも知れないからだ。それは究極的にはEN A / ローレベル EN B機の市場を変革していくだろう。もっとも、他のメーカーの中には「喜んで」この動きを支持するものもいる。
次に何が起きるかはわからない。何らかの法的処置が起こされでもしない限り、DHVはセーフティークラステストの運用を継続し、それは多くのパイロットから歓迎されることだろう。このテストはメーカーから愛されるか、「必要悪」と見なされるかのどちらかだ。いずれにしてもこのテストは続けられていくことだろう。セーフティークラステストがすぐに無くなってしまうことはないのである。

DHVテストは英語とドイツ語で発表されている。
www.dhv.de/web/en/safety/safety-tests

 

WHAT’S SO BAD ABOUT THE DHV SAFETY TESTS?

DHVセーフティーテストの何が悪いのか?

メーカーとDHVの間では、法的処置に言及されるまでに問題化している。(この記事に実名が出てこないのには理由があるのです!)では、DHVセーフティーテストの何が本当にそれほど悪いのか?メーカーがDHVと論じ合った点を挙げてみよう。

申し立て:DHVは1つのサイズをテストするだけで、また、全ての機体をテストしているわけでもない。
「DHVはこれを認めている。彼らは市場に出てくる全ての新型機をテストすることはできない。」彼らはたくさん出るだろうと思う機体を、テストするパイロットに合ったサイズでテストするだけだ。EN システムに基づいて作業しているテスト機関では1つの機体に対して全てのサイズをテストし、認証している。

申し立て:DHVではいろいろな条件でテストしていて、中にはプロフェッショナルなENテストパイロットは機体テストしないような条件もある。
「DHVは、機体は常にいろいろな条件で飛ぶものだと論じている。」ENテストは穏やかな条件で行われている。

申し立て:DHVの使用するデータロガーは自家製で透明性のあるテストを受けていない。
「DHVはロガー技術についてメーカーと共同作業することを望んでおり、誰もが入手可能なシステムを求めている。」それまでは、現行の自家製システムを彼らは信じている。

申し立て:DHVが使用するマヌーバーについてのガイドラインが存在しない。
DHVはテストで行うマヌーバーの基礎としてENのガイドラインを使い、これに少し工夫を加えている。例えば、フロントコラプスでは、ENが「50%以上」のコラプスを要求しているのに対して、DHVでは「可能であれば」最大100%のコラプスを求めている。セーフティーテストのパイロットはこれを実現させるようできる限りのことをしている。

申し立て:現在のセーフティークラスのテストパイロット2名の経験と技量
両名とも優秀なパイロットだが、どちらもプロフェッショナルなテストパイロットとしてメーカーやテスト機関として働いた経験はない。メーカーはこの2人はどのようにテストを行っているのかを知らない。どちらのパイロットも「他のテストパイロットやメーカー、テスト機関との意見交換は行わない。」「DNVの役員達は我々の疑問を書き留めて、メーカーがセーフティークラステストの少なくともその一部に参加できないか討議していた。」

WATCHING A SAFETY TEST

セーフティーテストを見る

メーカーの主な不満の1つが実際のテストにおける透明性の欠如だ。あるプロフェッショナルENテストパイロットは、セーフティークラステストの現場に遭遇し、目撃したことをメールで明らかにしてくれた。「やっていることは間違いが多く」、例えば、コラプスでオープンしている方へ体重移動したり、体重移動で最大限まで際限なくスパイラルダイブを行ったり、ライザーをつかんだり、スピードシステムを遅れてリリースすることでコラプスを加速させたり、使っているのはアクロ用ハーネスだったり、とのことである。
このパイロットが付け加えている。「プロフェッショナルなテストパイロットから見ると、それはまるで何としてでも機体を壊そうとしているとしか思えず、しかも通常に推奨されているテストルールには全く合っていない。」
不満を抱くメーカーにとっても最も不満に感じる点は、DHVの「実際の条件」でのテストは実際に通常の飛行で発生する事態を超えてしまっていることだ。また、ENテストと違って、テストの基準がなく、主観が入り込む余地が大きい。さらに言えば、自動車だってひどい走り方をすれば当然衝突するという話と、スリップしたときにどう対処するのかは別の話だということだ。EN A機であってもその設計限界を超えた飛び方をしてはならないのだ。

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